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『山本一道さんにいろいろ聞いてみた 【前編】』からの続きです。

↓前編はこちら


これからウェブで仕事をする人に

採用〜アップルップル流・新人さんの育て方

これからウェブで仕事をする人に向けてオススメの勉強法や何かアドバイスはありますか?

いまアップルップルはウォンテッドリーに求人を出してて…。

(調べながら)
以前、『未経験だけどウェブ制作会社に入れますか?』って相談されて。

ウォンテッドリーって求人サイトなんだけど、面接に行きたいとかじゃなくて、話を聞きに行きたいっていうボタンがあるんですよ。とりあえず気軽にその会社に突撃してみたい、みたいな感じのサイト。
それで、ここから来た人がいて、『未経験でウェブのことをやってみたいって思ってるんだけど、どうしたら入れますか?』って聞かれたんですよ。

で、まずアップルップルに入りたいっていうことで言えば、『今は出来てないかもしれないけど、出来るように見えるように頑張って』っていう感じですかね。

まだ出来てない人の場合、入社した後に頑張れそうだって思えなかったら、そういう人を採用するのって怖いじゃない?
だから、まずは“出来てる感”を頑張ろう、みたいな。そういう話をしました。

“出来てる感”があれば未経験でも採用するということですか?

うちはやる気のある未経験は大好きですよ。

アップルップルの社員はほとんどみんな未経験者で入った人たちです。

あとは、教えて欲しいみたいな感じじゃなくて、やっぱり自分で勉強できなきゃダメだよね。
新しい技術がどんどん出てきて、誰かが教えてくれるものじゃなかったりするから、自分で調べること。

情報発信

何のCMSでもいいんだけど、とりあえずウェブ業界に入りたいっていう人には、まずはブログを書きなさいと。

今すぐブログを書いて、自分が何か書いたことについて一人でも二人でも三人でもアクセスがあって。
で、Google Analyticsを入れてグラフが増えたり減ったりして、書いた事を世の中の人が見てくれてるけど、どうしたらこの数字が増えるのかっていうのを自分で考えて。

そういうことを考えていく、とことをやる。まぁ当たり前のことだと思うんだけど。
そういうことをまずやらないと、そういう仕事に就くのは難しいんじゃないかなと思います。

だからまずは自分で情報を発信をすること。

一生懸命ポートフォリオを作る、って言ってる人もいて、学生の方とか結構作ったりするけど、そこは自分としては求めていません。
どっちかって言うと、そこに自分がどれだけ頑張ってるかっていうのを書いてくれた方がいい。

サイトのデザインを頑張ってなかなか公開されないよりは、『できない、できない』と思ってることを途中経過でもいいから書くとか。
もし書いたとして、そこに書いていることを読んで「まだ出来てないな」って思っても、3ヶ月後ぐらいに見たら「ちょっとわかるようになってきてるな」とか。そう思えれば、この先もうちょっと時間が経ったらもっと出来るようになってるんじゃないかな、って思えるので。

あと何に興味を持ってるかっていうのをそこで発信してほしい。

最初はデザインに凝らずに、それはもっと後でいいので、まずはアウトプットしなさい、ということを言っています。ブログを書いてください、と。

スタッフ間の情報共有

あとね、アップルップルのやり方っていうことで言うと、ウェブで読んだことについて社員みんなでその情報をはてなブックマークで共有するようにしていて。

誰か社員がブックマークしたのを他の社員が見たりとか。

これを見てると、誰が何に興味があるかとか見えてきたりするので。
私はこういうのを選んで(ブックマークに追加して)ありますよっていうのがわかっていたりすると、じゃあこの技術について、次は使ってみようかみたいなことも話しできるし。
やっぱり一生懸命情報を発信してる人の情報を追いかけて行くことは大事なので。

自分の立ち位置を考える

ウェブ関係の仕事をやってみたいと思ってもプログラミング難しくて悩んでいたりする人もいると思うんですが、そういう場合はどのようにすればいいと思いますか?

ウェブっていろんな人がいろいろ携わって、やっと何とかなることもだんだん多くなっているので。

デザインをする人もいれば、マークアップとかフロントエンド側の人もいるし、それこそマーケティングのことに詳しいとかそれでもいいと思うんですよね。そういうのってあんまりわからない人も多いと思うんですよ。

だから、どの分野だったら自分は仕事ができるか、ウェブでの立ち位置というか。
デザインが好きだったらデザイナーになりたいと思うかもしれないけど。
だいたい多くの人がウェブに関わりたいっていう話になると、まずはデザイナーを目指すんですよね。
「あなたはデザインが得意なの?」って聞くと、『そうでもないんですけどってやりたいんです。』みたいな。

でも、デザイナーになりたいっていう人も、話を聞いていると、どっちかっていうとHTMLを書くフロントエンドのことだったりすることも多くて。
デザイナーをやりたいって入ってきた人でも、話を聞いていたらフロントエンドの方が向いているんじゃないかということで、フロントエンドの仕事をやらせているケースもあります。

フロントエンドの仕事を任せるにあたって、最初はどんなことから始めるんですか?

今はね、ここですかね。(Progateのサイトを表示)

まずはここでHTMLから勉強しなさいと。




ウェブのこれからについて


ウェブの過去と今と未来

ウェブがこれからどう変化していくか、一道さんの考えを聞いてみたいんですが、まずは過去(数年前)から比べて変わってきたことは何だと思いますか?

それはまぁ誰に聞いても同じことを答えると思うんですが、携帯電話、ガラケーがスマホになった。

昔は誰でも持っていたわけじゃないのに、今ではもう私の親の世代でもスマホを持っているからね。

だから誰でもスマホになって、5年後にはmac OSが無くなってるかもしれないよね。MacBook Proが無くなってるかもしれないよね。

もうこの後はパソコンっていうものが無くなっていく時代かもしれませんね。

動画を編集したりとか重い作業はあるじゃないですか?

うーん……動画を編集するっていっても、それもウェブで動画を作るサービスが出てきたりとか。

だって今ではYouTubeでも動画の切り貼りができるし、iPadでもできる。

確かにGo Proで撮った動画をGo Proのアプリ(Quik)に入れると、自動でいい感じの動画を作ってくれたりしますね。

もう今はそういう時代ですよね。

で、きっと5年後には 『ノートパソコンなんて、何をデカいものを使ってんの?』見たいな感じに…。

……キーボードがあるかどうかだね。
だって今どきの若い子とかはフリック入力じゃないとキー入力できない人とかもいるもんね。

画面もいらなくなってるかも。眼鏡に映ったりとか。

AR技術ですね。

ウェブ技術の進化についてはどうですか? 例えばプログラミングの変化などについては。

いま一番欲しいのは、回線速度に合わせたコンテンツ出しができるようにするもの。

現状ではデバイスの解像度が高いものに対しては2倍のサイズで出したりしているけど、遅い回線で解像度を高くして送ってたら余計に遅くなるみたいな話で…。

YouTubeは接続速度が遅いと自動的に解像度が落ちたりしますね。

そうですね。それがブラウザ上で出来るようになった方がいいんですよね。

回線が3Gか4GかWi-Fiか。Wi-Fiだったとしてもテザリングだったら、とか。

先日、お客さんのサイトでトップページに動画を載せたいって50MBぐらいの動画が貼られているのがあって。
それを読み込まないと表示されないって…。

それをどうしたらいいか考えてる時に、回線速度によって動画を使わずに静止画にするとか。
ハイスピードで大丈夫だったら、解像度が高くてすごく綺麗なものでもいいかもしれないじゃない。


あと、いまインターネット上で一番欲しいのは、Facebookだったら作れそうな気がするんだけど、アプリでカメラを人にかざすと、どこの誰で最後にいつ会ったとか自動で出るみたいなもの。
『久しぶりに会ったこの人はどこの誰だっけ?』みたいな時にチラって見たら教えてくれるような。そういうアプリを作れるのはFacebookだけだと思ってて。


実際、我々のやってる技術って本当にころころ変わりつつ行くので、何年後にどうなってるかなんて正直わからないじゃないですか。
よく会社でアップルップルの何カ年計画を立てないのかっていう話が出てきても、『無理無理。何年後にインターネットはこうなってるからこういうことをやっとかないと、なんて。』みたいな感じで。

最初からわかってることなんてないので難しいよねってよく言ってます。

でも頑張らなきゃいけないね。
実際には私もそんなに出来る人ではないので、あまりそんな偉そうなこと言えないですよ。


WCANなど、主催するイベントについて

イベントの役割・イベントがピークの頃・WCANのこれから

WCANをやることになったきっかけや、長く継続しているモチベーションの保ち方について教えてください。

WCANを始めたのは2000年の10月28日、まだプロバイダーの会社にいた頃。
WCANの前身みたいなやつで、 Macromediaのユーザーグループみたいな感じでやってて。

それがa-Nikkiのバージョン1.0のリリース日と同じ日なんです。
それは私の思惑(おもわく)としては、初めて会う人たちに、私はこういうものを作ってる人なんです、って言うために、言いたいがために、その日に1.0リリースしてからイベントに行ってるんですよ。

その日に開催したイベントとリリースしたものが今でも続いているっていうのがすごいと思う。どちらも両方。

一番最初のイベントではどんなことをしたんですか。

(自分のブログなどを調べながら)
ここには書いてないですね。
参加者は10数人いて、きっとこの時は自己紹介して終わったような感じだと思うんだけど…。

昔、ソーシャル(SNS)が始まる前の時代は…。
一番頑張っていた頃、2008年とかは一週間に一度ぐらいのペースでやってますね。

この頃はWCAN MINIという形で、マークアップをやってるグループ、アクションスクリプトをやってるグループ、デザインをやってるグループとか、グループが分かれていて、うちのスタッフがそれぞれバラバラでやっていました。

それと合わせて大きいWCANってのも普通にありましたよ。

この頃は募集開始して24時間で200人満席みたいな。そういう時代もあったんだけど、今は自分で勉強会を簡単に主催できる時代になったので。

やりたい時にやりたい人が少人数でできる時代になってきているので、その時に行かないと同業者が集まるイベントが無い、っていうことではないので、今ではそこまでのスピードはなくなりました。

だからもう私の義務としては、もうやめても大丈夫なのかもしれないけど、やっています。

その一番ピークの頃からほぼ10年ぐらい、1年前に1年後の予定は全部立てているので……いつも使ってる会場が13か月前予約なんです。13ヶ月前に予約しないと会場が使えないので、あらかじめ予約してたんですよ。だから、1年前には1年後の予定が決まっているみたいな。

だからやめる時がなかったんです。ずっと続いていたってことなんですね。

で、今年は大きな変化があって、それをやめたんです。

開催の1年前に行う会場の予約申し込みをしてないということですか?

そうです。

今は毎月ベースキャンプ(※ベースキャンプ名古屋)でWCANをやることにして、大きいイベントを予約しないようにしたんですよ。
だから、ある意味いつでもやめられるし、いつでも続けられるんだけど。

WCANが名古屋のウェブ業界を活性化させた功績は大きいと思うんですが。

うちがWCANをやってるから自分たちの仕事が増えたという気はほとんどしないんだけど、まわりで動いている人たちはその人たち同士で一緒に仕事してるとかはよく聞くので、社会貢献はしているかもしれないのかな、てとこですかね。

なので、もうちょっと続けていくつもりではいるけど、今年から毎月開催にしたら思いのほか大変なので(笑)

常に3つぐらいやってる感じなので、ちょっと辛いなぁ、と思いながら。
来年はまたちょっと変えようかな、とか思ってたりします。

でも、勉強会は今ならDoorkeeperとかconnpassとか使って誰でもイベントを立てられるし、会場も貸し会議室を借りなくてもコワーキングスペースを使ったりするっていうこともできるので。やろうと思ったら誰でもできるから、いろんな人がやってくれればいいかな。

実際、アップルップルの立ち上げ時のデザイナー中野さんは高知で WCK を頑張ってるし、a-blog cms の2代目開発者の佐藤さんもサイバーエイジェントでイベントの主催してるし、現役の森田さんや掘さんも自分で勉強会を主催してやってたりするから。

まぁそこら辺で私のDNAはちゃんと受け継がれているかな、と一応思いつつ。
アップルップルの仕事をしなくてもよくなったらWCANだけやってるおじさんになってもいいし。(笑)

いまアップルップルではどのような立場で動いているんですか?

開発に関しては伊藤さん(※アップルップルのCTO)に好きにしてもらっています。
何か『こうしたいんだけど…』って相談されることもあるけど、できるだけ自由にやってもらって。

(伊藤さんに)こういうのをやって欲しい、って言っても却下されることが多いからね。(笑)

ユニット(ブロックエディタ)システムを作った功績

ユニット機能について、a-blog cms  Advent Calendar 2017では受賞に値する功績だという記事もありましたが(※ 『一道さんは受賞に値する – Taku Fujita – Medium』)、あれはa-Nikkiで作られた機能ですよね。

そうですね。

こないだ久しぶりにa-Newsをインストールしてみたら、「当時のお前、偉い!」って自分で自分を褒めてやりました。

それはどういう面でですか?

RSSといえばブログの機能ですよね。
a-blogでなく、その前のa-NewsからRSS配信をしてたみたいで。 まぁ、Movable Typeの機能を見つつ、最終くらいで実装したんでしょうね。

あと、データベースを使わないで、今で言う静的サイトジェネレーターような感じなのも、昔の自分を褒めてやりたいところかな。

データベースを使っていないということは…?

1日1エントリー、何年何月のフォルダに何日っていうファイルが、その1ページで見てもちゃんと読み込める形で。静的書き出しに近いんだけど、書き出されたHTMLファイルを読み込んでフォームに変換するっていう機能を作っていました。

それを作った理由は、長くサイトを運用しようとした時に、その当時はCSVで書いたものをページに起こすみたいなことをするのが普通で。でもそれをすると件数が多くなってきた時にだんだん重たくなってくるとか、テキストファイル1枚を1行に全部書かれてるみたいな。
で、場合によってはそのファイルが壊れて飛んで無くなったりとかっていうのが困るから、っていうことからですね。

ユニットを思いついたきっかけはどういうところからですか?

a-Nikki の頃なので、 <p>〜 </p> がどんどん増えていくところを管理するのに、<p>毎に TEXTAREA を用意したらいいんじゃないかって思って。

その後、<p>〜 </p> の中に <img> が追加された a-News になって、テキスト要素と画像の要素を別に管理できた方がいいだろうと a-blog になった。それが、さらに進化していったのが、いま皆さんが使っている a-blog cms のユニットですね。

今では、ユニット自身を自由に作れるカスタムユニット機能とかまで出来て、ホント凄い時代です。

最後に

では最後に、今後何か挑戦してみたいこととか、やってみたいと思っていることはありますか?

今49歳で、40代のうちにマニュアルミッションの車を買おうって思っていて。なので、その後は趣味のサイトを作ろうと。(笑)

実際のところは、今の自分がやりたいことは、さっきから話してるようにウェブサービスを立ち上げること。
これは自分一人だけじゃなくて、うちの社員みんなが言ってることなので。

a-blog cmsの場合ですが、新しい機能が実装されたら、できればみんなに使ってもらいたいんですよね。
でもインストールするサービスっていうのは古いバージョンで止まってしまうことが多いので、我々の頑張ったことについて、それが利用できる人が限られてくるっていうこともあるんですよ。

なので、もっと多くの人に使ってもらえるようなサービスを作りたい。それはきっと自分一人だけじゃなくて、うちの社員みんなが……みんなかな…?。うん、みんなが思ってくれてることじゃないかなって思います。

是非うちが新しく作るサービスができたら使ってください。
まずはベータテストから。

はい。デバッグとかします。
お話を聞かせていただき、ありがとうございました。


インタビュー後に撮影

インタビューを終えて

ウェブ業界では情報に対して非常にオープンな文化が形成されており、そのおかげで有益な情報が広まりやすく、業界全体の活性化につながっています。
ウェブ自体の歴史がまだ浅いですが、ウェブが世の中に広まった頃に精力的に活動していた人たちの影響は大きく、もし特定の人たちの利益のために情報の流れを止めるようなクローズドな文化が形成されていたら、現状は大きく変わっていたと考えます。
そういった点で、一道さんや当時のウェブ普及に携わった人たちの功績やその影響は大きいと言えるでしょう。

(ウェブに限らず)新しいものに敏感で、すぐに新しい情報や仕組みを取り入れる姿勢は重要だと実感しました。

一道さんには話を聞いてみたいと思っていましたが、a-blog cmsの勉強会を金沢で開催した流れからチャンスに恵まれ、この企画に協力していただきました。ありがとうございました。


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